アルツハイマー型認知症の発症予防と歯周病治療や歯磨きの関係

全ての物質は脳内に入る際に、血液脳関門と呼ばれる場所を通過しなくてはなりません。これは、大事な神経細胞を防御するために、脳に血液中の有害な物質が入らないようにする仕組みです。
当然、人体に細菌感染が生じた際に作られた炎症性物質も、簡単に脳内に侵入することはできません。
しかし、歯周病であると、慢性的に炎症性物質が放出され、その炎症性物質により血液脳関門が長期にわたりダメージを受けます。結果として、血液脳関門が正常に機能しなくなり、正常では通過できない炎症性物質が脳内に侵入できるようになってしまうのです。
さらに、口腔内に潜んでいたはずの歯周病の原因菌そのものまでもが、脳内へ侵入することが可能となってしまいます。実際に、アルツハイマー病の患者の脳からは、歯周病の原因菌が見つかっています。
以上のようにして、歯周病の炎症反応が脳内へ波及していきます。ただし、歯周病に関わる炎症反応だけで、アルツハイマー型認知症が発症するとは考えにくく、現状では、歯周病が認知症の発症時期を早めたり、認知障害の程度を強めたり、進行を早めたりするなどの作用があるのではないか、と考えられています。
このように、アルツハイマー型認知症と歯周病が関係していることからも、歯周病治療や口腔ケアをすることで、アルツハイマー型認知症の発症予防や、症状の軽減、進行を抑えられる可能性があることをご理解いただけたかと思います。

アルツハイマー型認知症の発症率が高い年齢層は、70歳代です。ただし、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβの脳への蓄積は、発症する10〜15年以上前から始まっています。このため認知症を予防するには、遅くとも50歳代から歯周病をコントロールしていなくてはなりません。もちろん、それよりも先んじて行うほうがより望ましいということは、言うまでもありません。
また、認知症の原因として歯周病が挙げられている理由が、実はもう一つあります。それは、虫歯もそうですが、歯周病により、「歯を失い噛めなくなる」という状況が生じることです。
「物を噛む」という行為からも伝達される脳への刺激は、脳の活動に極めて重要な影響を与えているのです。
例えば、残っている歯が多いと認知症になりにくく、一方で歯がほとんど残っておらず、入れ歯も使用していない人は、認知症の発症リスクが高いことがわかっています。
つまり、歯を失い物が噛めなくなると、脳への刺激が減少して、脳の働きに影響が生じ、その結果として、認知症のリスクが増加するのです。
医療の発展で日本人の平均寿命はどんどん上がっていますが、身体的、精神的に健康な状態で長生きできるかどうかは、また別の問題です。もし認知症を患ったら、満足のいく人生を営めるのかどうかを考えると、難しいものがあります。口腔ケアで認知症にかかるリスクを下げられるなら、口腔ケアをしないという選択肢はないと思いませんか。

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