歯周病の脅威は、早産や低体重児出産にも影響を及ぼしていると言われています。
妊娠37週未満での出産を「早産」、新生児の体重が2500g未満での出産は「低体重児出産」と定義されています。
近年の流れとして、全出生数のうち、低出生体重児の割合が増加しています。その理由は、不妊治療の影響で双子や三つ子の赤ちゃんが増えたことや、「超低出生体重児」といわれる、1000g未満で生まれてきた赤ちゃんの命も救えるような、新生児医療の進歩に依るところが大きいと考えられます。
一方で、早産や低体重児出産で生まれた新生児は、身体的および知能的な障害を併発するリスクが高いことが問題視されています。
例えば、正期産児と比べて、注意欠如多動性障害、学習障害、聴力障害などが生じやすい傾向にあると言われています。特に超低出生体重児は、脳性麻痺や精神発達遅滞、視力障害などのリスクが高く、3年以上の長期のフォローアップが必要となります。
こうした早産や低体重児出産の高リスク要因に、妊娠中の歯周病が挙げられているのでのです。こちらも、歯周病で生じるこの炎症反応に依存した高濃度の炎症性物質が、血流を介して子宮、胎盤などの器官に運ばれ、悪影響を及ぼしている可能性があるといわれています。
大事なことなので、どのように関係しているのかを見ていきましょう。
陣痛はプロスタグランジンという物質の分泌が高まることで起きるのですが、この分泌を促進するのが、歯周病の慢性的な炎症により誘発される炎症性物質です。
こうした歯周病由来の炎症性物質が増加することで、プロスタグランジンの分泌が亢進され、結果として早産を誘発する頸管熟化や子宮収縮などが引き起こされると考えられています。
また、妊婦の胎盤や羊水、臍帯からも歯周病原菌が検出されたとも報告されていることから、歯周病原菌が、歯周ポケット内壁の微小潰瘍から血流にのって、子宮へ運ばれ、出産異常に影響している可能性も考えられています。
そもそも、女性は「妊娠性歯肉炎」といって、妊娠すると女性ホルモンが急激に増加することで、歯周病原菌が増殖しやすくなり、歯肉の炎症や出血が起こりやすくなります。
また、「つわり」の時期は、食の嗜好に変化が生じたり、胎児の発育による食事回数の増加とそれに応じた口腔ケアが不足しがちになり、口腔環境が悪化しやすくなります。そのため、妊娠中は、食後の歯みがきやうがいを、いつも以上にこまめに行うように気を付けることが大切となります。
周囲の人は妊婦に対していたわるのはもちろん、「歯みがきはしっかりやろうね」と声を掛けてあげるのも一流の気配りと言えます。
以上、全身の様々な疾患予防のためにも、口腔内の健康管理が重要であることをお話ししてきました。超高齢化社会を目前にし、健康寿命を延ばすことこそが課題とされている中で、歯周病予防は今後ますます重要視されていくでしょう。また、歯がある人と歯がない人とでは、人生の終末を比較すると、幸福度において大きな差が出ることは明白です。
自分の歯を使って、美味しくものが食べられることは、何物にも代えられない幸せであり、それは結果として、健康寿命を延ばすことにもつながります。
長期的に見て、若い時から歯の健康管理を行うことで得られるメリットは想像以上に大きいと言えます。そして、それが単に見た目や虫歯・歯周病予防だけの問題でなく、全身の健康、ひいては今後の人生の質を高めることにつながると理解していることが、一流の証なのです。

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