何のために磨くのかを知らず、「歯みがきする」が目的化
大抵の場合、大人も子どもも歯をきちんと磨けていません。それはなぜでしょうか。忙しくて時間がないからでしょうか。違います。
日本人は「歯みがきすること」自体が目的となってしまっている人が多いからです。歯みがきすることが目的であれば、1日に3回磨く日本人は間違いなく100点満点です。歯みがきが下手な人でも、歯みがきをすれば、口の中に残った食べカスや、歯の表面の汚れは取れます。歯の表面もツルツルになり、爽快感も出るでしょう。
でも、残念なことにそれだけでは十分にプラークは取り除けないのです。
歯周病菌は空気が苦手という話をしました。そのため、歯周病菌は空気に触れにくい場所、すなわち、「歯と歯ぐきの境目」や、「歯と歯の間」を好んで集まり、そこを感染ポイントとします。ですから、こうした部位のプラークを取り除かなくては、歯みがきをしている意味がないのです。
そして、多くの人が「磨けている」と思っていても実は磨けずプラークが残っている二大箇所というのが、まさに「歯と歯肉の境目」と「歯と歯の間」なのです。
つまり、除去すべき肝心な部位のプラークが除去できていない、だから多くの日本人が歯周病に悩まされるのです。「歯と歯肉の境目」や「歯と歯の間」こそ、歯周病予防のために、最も磨かなくてはならないのです。
では、「歯と歯肉の境目」や「歯と歯の間」のプラークを取り除くには、どうすれば良いのでしょうか。
まず一つ目の「歯と歯肉の境目」のプラークは、歯ブラシの毛先を歯と歯肉の間にしっかりと向けることが一番重要なポイントです。「そんなの言われなくても知ってる!」と思われたかもしれませんが、これが思っているほど簡単ではありません。
そのために、まず「鏡を見る習慣」を身につける必要があります。慣れてきたら、鏡を見なくてもできるようになりますが、最初は鏡をよく見て、歯ブラシの毛先が磨くべき方向に向けられているかを確認すること、これがとても大切です。
鏡を見て歯みがきしてみよう
歯みがきにどんなに時間をかけても、歯ブラシの毛先が磨くべき方向を向いて当たっていなければ、プラークは除去できません。
鏡に向かうのが恥ずかしい、面倒だ、などとグダグダしている場合ではありません。効率よく、かつ効果的に歯を磨くために、まず鏡の前に立ちましょう。
鏡を見ながら、毛先が歯と歯肉の間に当たっていることを確認しながら、1本1本丁寧に磨く、この基本が何よりも大切なのです。
そして、鏡を見ながら歯を磨いていると、どんなに頑張っても歯ブラシだけで全てのプラークを除去するには限界があることに気が付くはずです。
そうです、磨かなくてはいけないもう一つの部位である「歯と歯の間」。
「歯と歯の間」は、歯ブラシ単独では掃除が行き届きにくい部位です。そこで、デンタルフロス、もしくは歯間ブラシといった歯間清掃器具の登場となるわけです。プラークは、歯ブラシ単独では約60%しか除去できないこと、そこにデンタルフロスによるケア、もしくは歯間ブラシによるケアを追加すると、いずれも約95%ものプラークが除去できることは、第1章でお話しした通りです。私たちが取るべき策はただひとつ。プラークが歯石へと変わって手遅れとなる前に1日1回、歯ブラシと歯間清掃器具による丁寧な歯みがきを行うことです。
つまり、短時間で歯ブラシだけでさっと終わらせるような歯みがきを1日3回やっても、あまり意味がないのです。そうするよりも、1日1回十分な時間をとり、歯間ブラシなどを併用して磨く、これこそが歯周病に効果的な歯みがきです。
そしてもうひとつ重要なのが、口の中の状態が各自異なる点にも留意することです。例えば、歯並びの悪い人ならば、歯と歯の重なった部位にプラークが必然的につきやすい、など気をつけるべきポイントが異なります。
ですから、一人ひとりの口の中の状態に合わせた歯みがきの仕方があります。使用する歯ブラシなどの道具についても、各人の口の中の状態によって適切なものが異なってきます。そこで、千差万別である歯みがきの仕方や道具についてアドバイザー的役割を担うのが、歯科医師及び歯科衛生士なのです。
みなさんも、かかりつけの歯科医院を見つけていただき、一度口の中を診てもらった上で、自分に適した歯ブラシや補助道具を教えてもらうことをお勧めします。

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