子供の矯正はいつから?早期治療が必要なケースと待っていいケースを歯科医が徹底解説

矯正する人がまだまだ少ないことも、日本が歯科後進国と言われる所以のひとつです。

日本では、子どもに矯正をさせるのはまだまだ少数派です。しかし欧米では、子どもに矯正をさせるのは親の責務と考えられているほどで、特にアメリカではその傾向が強く、離婚した場合の養育費に矯正費用が計上されることもあるといいます。それくらい、矯正は日常生活の一部として根付いているのです。

そこで今回は、子どもの矯正において重要な「開始時期」についてお伝えします。早期からのアプローチが必要な場合と、急がなくてもよい場合——何がその違いを生むのでしょうか。

目次

早期からの治療が望ましいケース

反対咬合(受け口)

上の前歯よりも下の前歯が前に出ている状態です。幼少期に放置しておくと成長とともに悪化しやすく、骨格的にシビアな状況へと発展しがちです。顎の成長を利用できる5歳から10歳の時期を逃すと、外科手術が必要になることもあります。もっと早く来ていれば……と後悔される親御さんを、何人も見てきました。受け口は、早く介入するほど簡単に、かつ効果的に治せる場合が多く、子ども用の矯正装置は使いやすく、治療期間も短く済むことが多いです。

交叉咬合

噛み合わせたときに、本来外側にくるべき上顎の歯が下顎の歯の内側に入り込んで交差している状態です。顎の成長が左右非対称になり、顔の歪みにつながることがあります。放置すると顔貌にも影響が出るほか、顎関節症のリスクも高まります。

上顎前突(出っ歯)

上の前歯が極端に前に出ている状態です。転倒時に前歯を折るリスクが非常に高く、口が閉じにくいために口呼吸になりやすい点も心配です。口呼吸は、感染症リスクの上昇・集中力の低下・顔貌の変化を引き起こすことがわかっています。

開咬(オープンバイト)

奥歯を噛み合わせたときに、前歯が噛み合わない状態です。食べ物を前歯で噛み切れないだけでなく、サ行やタ行の発音が不明瞭になることもあります。成長とともに悪化しやすく、大人になってからの治療は非常に困難です。指しゃぶりや舌癖が原因のことが多く、早期に介入できれば比較的簡単に治りますが、放置すると骨格的な問題へと発展し、外科的な矯正治療が必要になることもあります。

著しい叢生(ガタガタの歯並び)

歯が重なり合ってガタガタに生えている状態です。頑張って磨いても歯垢が残りやすく、虫歯や歯周病のリスクが非常に高くなります。永久歯が生えるスペースが足りず、埋まったままになることもあります。顎の成長期に拡大しておかないと、将来歯を抜いての矯正が必要になる可能性が高くなります。

埋伏歯

永久歯が骨の中に埋まって生えてこない、または変な方向に生えようとしている状態です。放置すると歯が骨の中に埋まったままになるだけでなく、周囲の歯の根を溶かすこともあります。レントゲンで初めて発見されることも多く、定期的な検診が非常に重要です。早期発見・早期治療によって、正常な位置へ誘導できます。

呼吸・睡眠に影響している場合

いびき・睡眠時無呼吸・常時の口呼吸がある場合です。成長ホルモンの分泌に影響し、学習能力や集中力の低下を招くほか、全身の健康にも関わります。近年の研究では、歯並びと呼吸障害の関連性も指摘されています。顎が小さく気道が狭くなると、睡眠の質が低下するリスクがあります。

早期治療を「行った方がいい」ケース——個別判断が必要

中等度の歯並びの乱れ・審美的な問題

少し歯が重なっている、軽度の出っ歯、わずかなすきっ歯など、絶対とまでは言えないけれど行った方がいいと判断されるケースもあります。虫歯や歯周病のリスクがどの程度高まるか、発音や咀嚼に問題があるか、本人が気にしているか、成長とともに悪化する可能性があるかが判断のポイントです。

こうしたケースには、こう考えてみることをお勧めしています。今治療すれば簡単で費用も抑えられる。大人になってからだと、時間はもちろん費用も倍以上かかる可能性がある、と。

審美的な問題については、特にデリケートな視点が必要です。歯並びなんて気にしなくていいと親は思っても、本人は深刻に悩んでいることがあります。前歯の隙間を気にして笑うたびに口を隠していた子が、矯正後に笑顔が輝くようになり、人生が変わったと言ってくれたそんな経験を、私は何度もしてきました。審美的な問題は、たかが見た目ではないのです。子どもの心の健康に直結することを、見逃してはいけません。

将来的に問題になる可能性がある場合

今は大丈夫でも、親の歯並びが悪い・顎が小さく永久歯の生えるスペースがなさそう・指しゃぶりや舌癖があるといった場合には、定期的な経過観察が重要です。3から6ヶ月ごとにチェックして、悪化の兆候があれば早めに矯正治療の介入を検討します。

「急がなくてもいい」ケース

軽度の歯並びの乱れ

少しだけ歯が重なっている、わずかなすきっ歯など、虫歯や歯周病のリスクが低く、食事や発音に問題がなく、本人も親も特に気にしていない場合は、定期的な検診を続けながら様子を見ることができます。完璧な歯並びを目指す必要はなく、健康で機能的であれば十分という場合もあります。

矯正は永久歯が生えそろってからという考え方も、一つの選択肢です。ただし、それはケースバイケース。迷ったときは、ぜひ矯正の専門医に相談してください。お子さんにとって、最良の選択ができますように。

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この記事を書いた人

歯科医師・歯学博士
国立大学法人東京医科歯科大学歯学部歯学科首席卒業。
在学時、英国キングスカレッジ・ロンドン歯学部に留学。その後、東京医科歯科大学歯学部附属病院研修医を経て、東京医科歯科大学大学院に入学し博士号取得。大学院在学中には日本学術振興会特別研究員も務める。
日本歯科総合研究所を2017年に設立し、代表取締役社長に就任。
「日本を世界一の歯科先進国へ」をミッションとして掲げ、歯科業界の発展に貢献すべく活動を行っている。

〈メディア実績〉
・フジテレビ ほんまでっかテレビ
・テレビ東京『なないろ日和』
・小学館『女性セブン』
・日本歯科新聞
・講談社『mi-mollet』
・テレ東プラス+
・光文社『CRASSY』
・PIVOT

〈監修〉
・コニカミノルタ口臭測定器
『kunkun dental』監修

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