子供の矯正はいつから?早期治療が必要なケースと待っていいケースを歯科医が徹底解説

矯正する人がまだまだ少ないことも、日本が歯科後進国と言われる所以です。

日本では、子どもに矯正をさせるのはまだまだ少数派でしょう。しかし、欧米では子どもに矯正をさせるのは親の責務であると考えられているほどです。特にアメリカではその傾向が強く、仮に離婚した場合には、感謝料に子どもの矯正費用も計上されるほどです。

それくらい「矯正は日常生活の一部」となっているのです。

それほどに大切な子供の矯正ですが、開始時期が重要になることがあります。

早期からのアプローチが必要な場合と急がなくてもいい場合、何が違うのでしょうか?

早期からの治療が望ましいケース

1. 反対咬合(いわゆる受け口):上の前歯よりも下の前歯が前に出ている状態

なぜ必要か

幼少期の反対咬合を放置しておくと、成長とともに悪化する可能性が高く、骨格的にシビアな状況へと発展しやすい

幼少期の顎の成長を利用できる時期(5〜10歳)を逃すと、外科手術が必要になることも

「もっと早く来ていれば…」と後悔される親御さんを、何人も見てきました。受け口は、治療の介入が早ければ早いほど、簡単に、かつ効果的に治すことが可能となる場合が割と多くあります。特に、子供の矯正装置は、使いやすく、治療期間も短く済むことも多いです。

2. 交叉咬合:噛み合わせたときに、本来外側にくるべき上顎の歯が、下顎の歯の内側に入り込んで交差している状態

なぜ必要か

顎の成長が左右非対称になり、結果的に顔の歪みにつながる

放置すると、顔貌にも影響が出る

顎関節症のリスクが高まる

3. 上顎前突(いわゆる出っ歯):上の前歯が極端に前に出ている状態

なぜ必要か

転倒時に前歯を折るリスクが非常に高い

口が閉じにくく、口呼吸になりやすい

口呼吸は、感染症リスク、集中力低下、顔貌の変化を引き起こす

4. 開咬(オープンバイト):奥歯を噛み合わせた時に、前歯が噛み合わない状態

なぜ必要か

食べ物を前歯で噛み切れない

発音障害(サ行、タ行が不明瞭)

成長とともに悪化しやすい

大人になってからの治療は非常に困難

指しゃぶりや舌の悪い癖(舌癖)が原因のことが多く、早期に介入できれば比較的簡単に治ります。しかし、放置すると骨格的な問題になってしまい、場合によっては外科的な矯正治療が必要になることも。

5. 著しい叢生:歯が重なり合って、ガタガタに生えている状態

なぜ必要か

頑張って磨いても歯垢が残りやすく、虫歯・歯周病のリスクが非常に高くなる

永久歯が完全に生えるスペースがなく、埋まったままになることも

顎の成長期に拡大しておかないと、将来歯を抜いての矯正が必要になる可能性が非常に高くなる

6. 埋伏歯:永久歯が骨の中に埋まって生えてこない、または変な方向に生えようとしている状態

なぜ必要か

放置すると、歯が骨の中に埋まったままになる

周囲の歯の根を溶かすこともある

早期発見・早期治療で、正常な位置に誘導できる

レントゲンで初めて分かることも多く、定期的な検診が非常に重要。

7. 呼吸・睡眠に影響している場合いびき、睡眠時無呼吸、常に口呼吸

なぜ必要か

成長ホルモンの分泌に影響

学習能力、集中力の低下

全身の健康に関わる問題

最近の研究では、歯並びと呼吸障害の関連性が言われています。

顎が小さく狭いと、気道が狭くなり、結果として睡眠の質を低下させるリスクがあります。

早期に矯正治療を「行った方がいい」ケース:個別判断が必要

次に、「絶対」とまでは言えないけれど、「行った方がいい」と判断されるケースです。

  • 中等度の歯並びの乱れ:少し歯が重なっている、少しすきっ歯、軽度の出っ歯など

判断のポイント

虫歯・歯周病のリスクがどの程度が高まるか

発音や咀嚼に問題があるか

本人が気にしているか

成長とともに悪化する可能性の有無

こういうケースは、正直なところ「絶対に矯正しなければいけない」とまでは言えません。でも、こう考えることをお勧めしています。

「今治療すれば簡単で治療の費用も安く抑えられる。大人になってからだと、時間はもちろん費用も倍以上かかる可能性がある」

  • 審美的な問題:機能的な問題ないけれど、見た目が気になる場合

判断のポイント

本人が深刻に悩んでいないか

学校で友達からからかわれたりしていないか

自己肯定感に影響していないか

これは、非常にデリケートな問題です。「歯並びなんて気にしなくていい」と親は思っても、本人は深刻に悩んでいることもあります。

こんなケースがあります。前歯の隙間を気にして、笑うときに必ず口を隠していました。自信のない表情、それがゆえに友人関係も希薄になりがち。当然、友達との写真を撮ることを嫌がります。

そんな子が矯正を行いました。すると、どうなったでしょう。彼女の笑顔は見事に輝くようになったんです。「人生が変わった」と言ってくれました。

審美的な問題は、「たかが見た目」ではないのです。子供の心の健康に直結することを見逃してはいけません。

3.将来的に問題になる可能性がある場合:今は大丈夫だけど、成長とともに悪化しそうな場合

判断のポイント

親の歯並びが悪い(遺伝的要因)

顎が小さく、永久歯が全部生えるスペースがなさそう

悪習癖(指しゃぶり、舌癖など)がある

こういう場合には、「定期的な経過観察」が重要です。3〜6ヶ月ごとにチェックして、悪化の兆候があれば早めに矯正治療の介入を検討します。

「急がなくてもいい」ケース

逆に、「今すぐ矯正しなくても大丈夫」というケースもあります。

1.軽度の歯並びの乱れ:少しだけ歯が重なっている、わずかなすきっ歯など

こんな場合は様子見で大丈夫です

その他、

虫歯・歯周病のリスクが低い

食事や発音に問題ない

本人も親も特に気にしていない

定期的な検診を受けている

「完璧な歯並び」を目指す必要はなく、健康でかつ機能的であれば、それで十分という場合もあります

「矯正は永久歯が生えそろってから」というのも、聞いたことがあるかもしれません。それも一つの考え方です。

ただし、それはケースバイケース。専門医の判断が重要です。

もし迷ったら、いつでも矯正の専門医に相談してください。専門医は、一緒に最適な答えを見つけるためにいます。

お子さんにとって、最良の選択ができますように。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

歯科医師・歯学博士
国立大学法人東京医科歯科大学歯学部歯学科首席卒業。
在学時、英国キングスカレッジ・ロンドン歯学部に留学。その後、東京医科歯科大学歯学部附属病院研修医を経て、東京医科歯科大学大学院に入学し博士号取得。大学院在学中には日本学術振興会特別研究員も務める。
日本歯科総合研究所を2017年に設立し、代表取締役社長に就任。
「日本を世界一の歯科先進国へ」をミッションとして掲げ、歯科業界の発展に貢献すべく活動を行っている。

〈メディア実績〉
・フジテレビ ほんまでっかテレビ
・テレビ東京『なないろ日和』
・小学館『女性セブン』
・日本歯科新聞
・講談社『mi-mollet』
・テレ東プラス+
・光文社『CRASSY』
・PIVOT

〈監修〉
・コニカミノルタ口臭測定器
『kunkun dental』監修

コメント

コメントする

目次