子どもの虫歯菌が増えるかどうかは、母親の妊娠時からある程度決まってきます。
と言っても、ミュータンス菌は、生まれたばかりの新生児の口の中には存在しません。乳歯が生え始める生後6〜8カ月頃からミュータンス菌は一気に増え始め、乳歯が生え揃う2歳前後が定着時期となります。
では、このミュータンス菌、どこから来るのでしょうか。ミュータンス菌が急速に増える時期が、離乳食を開始する時期と重なる――これが大きなヒントです。
「虫歯の原因は母子感染である」ということを耳にしたことがあるかもしれません。子どもの虫歯ができる原因は、母親や親族のだ液に含まれる虫歯菌の感染によるもので、70%は母親から感染し、残りの30%は父親やその周りの家族や身近な人から感染すると言われています。大人が口移しで食べ物を与えたり、同じお箸や、スプーンなどを使用したりすることで感染してしまうのです。
少し話が逸れますが、歯医者同士の会食では面白い光景が見られます。取り分けの際に、誤って自分の箸を大皿につけてしまった場合、それ以降は誰もその皿に触ることはありません。もちろんその理由は、菌が移るからです。これは、極端な話(そう簡単に菌は移りません)ではありますが、歯医者仲間ではよくある話です。
そう考えると、昔は母親が噛み砕いた食べ物を離乳食として子どもに与えているのをよく見かけましたが、今考えると大変恐ろしいことです。
とはいえ、もともとミュータンス菌の感染力はそれほど強くはありません。ただし、周囲の大人の口腔環境が悪く、菌を大量に保有しているような状態で、何度も何度も頻繁に赤ちゃんに接触したりすると、感染して子どもの口の中に定着してしまいます。
特に、母親のだ液中のミュータンス菌数が多いと、早期に感染させやすいことがわかっています(※34)。ですから、遅くとも乳歯の萌出が開始する生後6カ月前には、母親の口腔内が良好な状態になっている必要があります。
つまり、子どもの虫歯予防は妊娠時から始まっている、というわけです。
ただし、妊娠時はつわりに伴い口腔ケアが十分に行き届かない、また食生活が変動したりと虫歯になりやすい生活環境になりがちですから、より慎重に口腔ケアを徹底する必要があります。母親も含め、赤ちゃんの周りの大人たちが口腔内を清潔にし、親から子どもへのミュータンス菌の感染を断ち切ることが、子どもの虫歯を防ぐ第一歩なのです。
赤ちゃんの虫歯対策は妊娠時から始める

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