日本はいまだ歯科後進国と言われます。
歯が痛くなった、かなり状態が悪くて残せそうにない、抜いたらどうしよう——そんなやりとりが、日本中の歯科医院で毎日繰り返されています。
最初にはっきり伝えておきます。歯の病気は、日頃から正しくケアしていれば予防できます。それにもかかわらず、こうした場面に幾度となく遭遇します。なぜ、そこまで何もせず放置してしまうのでしょうか。
原因のひとつは、日本の医療保険制度にあります。3割の自己負担で十分な歯科治療を受けられる一方、予防的処置には保険が適用されません。そのため、予防しようという発想が生まれにくく、歯が痛くなってから歯医者に行けばいいという意識に陥りやすいのです。しかし、一度削った歯は元には戻りません。抜いてしまったものは、二度と取り戻せないのです。
歯科後進国と言われる理由
理由1:歯科定期検診の受診率が依然として低い
世界と日本の歯科定期検診受診率を比べてみましょう。スウェーデンは約80から90%、アメリカは約70から80%、イギリスは約70%、そして日本は約44から64%です。
近年、日本の受診率は上昇傾向にあるものの、世界的に見るとまだまだ低い水準にあります。約半数の人が、歯が痛くなってから、問題が起きてから歯科医院に行くわけです。予防という概念が、十分に根付いていないということです。
検診で来ましたという患者さんは、残念ながら約半数。多くの方が、夜も眠れないほどの痛みを抱えて駆け込んでくるのが現実です。
学校で歯科検診があるじゃないですか、と思う方もいるかもしれません。確かにそうです。でも、それは義務教育までの話。大人になってからの予防意識は、圧倒的に低いのです。
理由2:80歳での残存歯数が先進国最低レベル
次のデータも見逃せません。80歳時点での残存歯数の平均は、スウェーデンが21本、アメリカが17本、日本が15本です。
8020運動という言葉を聞いたことがありますか?80歳で20本の歯を残そうという、日本歯科医師会が30年以上前から推進している運動です。しかし現実は厳しく、達成率は50%程度にとどまっています。数字は年々改善しているものの、欧米先進国にはまだ追いついていません。
歯を失う主な原因は虫歯と歯周病です。そしてその多くは、予防できたはずのものなのです。
このデータが示しているのは、予防の大切さを知っている人と知らない人では、50歳以降の歯の状態が驚くほど違うということです。定期検診を受け、日々のケアを丁寧にしている方は、70代・80代でもほぼすべての歯が残っています。噛む力も衰えず、何でも美味しく食べられる。一方、痛くなってから来院される方は、50代で入れ歯、70代で総入れ歯そんなケースも少なくありません。
もっと早く予防の大切さを知っていれば。そう後悔される患者さんを、何人も見てきました。だからこそ、一人でも多くの方に歯科予防の大切さを知っていただきたいのです。

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